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中谷直樹先生が「日本疫学会奨励賞」を受賞しました
日本疫学会奨励賞受賞の一言
予防医学・疫学部門 中谷直樹
このたび「がんに影響を及ぼす心理社会的要因の検討」で、日本疫学会奨励賞を授与されました。このような伝統と名誉ある賞を授与いただき大変嬉しい一方で、気の引き締まる思いです。また、これまで私に関わっていただきました多くの先生方に感謝申し上げます。
私は「メンタルヘルス」に興味があり、東北大学大学院の修士課程在学中より心身医学・行動医学を主に研究してきました。さらに、博士課程進学に際し、公衆衛生学分野(久道先生、辻先生、坪野先生、西野先生の下)にて学内留学の機会を得ました。このことが私の最大の転機となりました。
週1回開催される公衆衛生学分野の勉強会では、先生方の議論の中に出てくる単語が良くわからず(コックス? ザー? テーベ? コウラク? チャンス? バイアス?など数えきれません)、数か月間はただ座っていました。しかし、この議論に加われないことに対して「悔しい」という感情が徐々に芽生え、先輩方の指導の下、様々な勉強をしました。公衆衛生学分野にお世話になって約10年が経ち、あの「悔しい」という気持ちが、疫学の難しさ、奥深さ、楽しさ、を知るために重要だったと、今更ながらに実感しております。
今回の受賞対象となった成果は、宮城県コホート研究や多くの大規模データにより得られたものです。結論として、心理社会的要因(特に、パーソナリティ・抑うつ)とがん発症/生命予後の関連について、概ね両者の関連はない、あるいはあったとしても両者の関連は小さいことが明らかになりました。一方で、乳がん患者の男性パートナーはうつ病リスクが約40%増大し、また、乳がん患者死亡後の男性パートナーのうつ病リスクは3.6倍上昇するという結果が得られました。本研究結果を高く評価していただけたことに大変感謝申し上げます。
これからも東北メディカル・メガバンク事業に尽力するとともに、慢性疾患を有する者の家族・配偶者への支援に向けた研究活動に力を入れて参る所存です。今後もご指導・ご鞭撻の程宜しくお願いいたします。
最後になりましたが、今日まで親身なご指導、ご支援頂いております公衆衛生学分野教授 辻 一郎先生、諸先生方、秘書様方にこの場をお借りしまして心より感謝申し上げます。
