東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学専攻 公衆衛生学分野

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2009年度(平成21年度)公衆衛生学教室同窓会総会

会長挨拶

 皆さん、こんばんは。お久しぶりの方も沢山いらっしゃいますけれども、お元気そうで何よりです。
 恒例によりまして、教室の1年を振り返ってみたいと思います。先ほど、久道先生もお話になられましたが、今年、久道先生が古希を迎えられました。非常にお元気でおられまして、うれしい限りであります。先ほど先生は、「1月から3月はゴルフをしない」とおっしゃいましたが、では何をしておられるかというと実はボウリングでありまして、このスライドは、教室恒例の「基礎医学修練」打ち上げのボウリング大会で、久道先生が投げているところです。このときは、先生、4連続ストライクを出しましたですね。4連続ストライクって、何て言うんでしょうか? 私は初めて見ましたですね。毎年、毎年、わが教室員は久道先生に負け続けておりまして、頑張らなきゃというところであります。

 今年いくつか受賞がありましたので、順次ご紹介したいと思います。今年、博士課程を修了した柿崎さんが、東北大学総長賞と東北医学会奨学賞、この2つを受賞しました。パーソナリティと睡眠時間のそれぞれについて疫学研究をまとめてくれたことが受賞理由です。学生の荒井志津葉さんが、基礎医学修練の成果を論文にしてJournal of Epidemiologyに出しまして、東北大学医学部学生奨学賞を受賞しました。次に、遠又君という、博士課程の新入生が日本公衆衛生学会で最優秀演題に選ばれました。この学会には1,500を越す一般演題が集まるのですが、各セッションの座長と学会事務局の選考委員会によりまして、最も優秀な演題10題を選ぶというものです。それに見事選ばれたので、非常にうれしく思いました。それから、まだ内定ですけれども、寳澤君が日本疫学会の奨励賞を受賞することになりました。わが教室では深尾先生から始まりまして、私、坪野先生、荒井先生、大久保先生、栗山先生。そして7番目ですね。一つの教室から7人も受賞しているところは、他にはありません。
 もう一つ、今回すばらしい受賞は、今、カメラマンをやってくれている長沼君です。この度、日本学生支援機構の優秀学生顕彰大賞を受賞しました。全国の大学生で秀でた者を顕彰するということで、学術部門と運動部門と芸術部門と社会貢献部門のそれぞれで、大賞を授与しています。たとえば運動部門では、大賞の受賞者は去年の北京オリンピックに出た大学生。そういうレベルの賞なのです。学術部門には100件ぐらいの応募がありまして、そのうち4名が大賞に選ばれました。そのうちの1人が長沼君です。受賞理由がこの3つのペーパーですね。American Journal of Epidemiologyが2つと、International Journal of Cancerです。最初は基礎医学修練だったわけですが、それからも研究を続けまして、学生のうちに論文を3つ書きまして、そのインパクトファクター合計点が何と15点。このことを山本研究科長に報告していたのですが、その後、教授会で紹介してくださいました。そのとき、学生時代にペーパー3本書いてインパクトファクター15点とおっしゃったときは、教授会の部屋が騒然として、「学生で15点!?」ということで、長沼君の名前は教授会の先生方の記憶に残ったことでしょう。また、公衆衛生の研究そして教育も非常に高く評価されて、私も本当に鼻が高い次第です。これからもまた頑張ってほしいと思います。

 さて、インパクトファクター賞ですけれども、これは二人です。一人が渡邊生恵さんですね。American Journal of Clinical Nutritionに掲載された緑茶と肺炎死亡との関係に関する論文。もう一人が寳澤君で、これもAmerican Journal of Clinical Nutritionに掲載された緑茶と心理的な苦痛との関係に関する論文です。二人とも同点ですので、お二人に後で差し上げますので、ごあいさつをお願いしたいと思います。

 このスライドは、教室の暑気払いとして楽天の野球を見に行ったときのものです。雨が降って大変だったんですけれども。この方々は、中国から来ていた李先生とご家族です。彼は武田製薬の財団からファンドを貰いまして2年間ここにいました。それで奥さんが夏休みで来ていて、こちらはお嬢さんですね。李先生は、2年間ここにいてペーパーを3本書きました。大変頑張ってましたですね。
 もう一人ここに写っているのが李君といいまして、両方とも李なので、我々は「オールド・リー」と「ヤング・リー」と言っていたのですが、彼は星野フェローといいまして、医学部長を務められた故・星野先生が寄附されたお金をもとに、中国の大学院生約10名を毎年夏休みに4週間招くというプロジェクトで来ました。非常にできる人で、たった4週間で我々のコホート研究データを解析して、ペーパーを1本書いて、いま投稿中という状況です。
 最近思うのは、この教室では10年以上前から中国人留学生を受け入れていますけれども、このところ本当に中国の疫学研究のレベルというのは高くなっていますね。研究者のスキルが年ごとによくなって、プレゼンテーションが上手になっています。ほんとうに驚いています。うかうかしていると、アジアにおける日本の疫学の位置付けが落ちていくのではないかと、本当に心配になった次第であります。
 新人紹介ですが、博士課程で鴫原さん、坪谷君、遠又君ですね。それから修士課程が木幡さんと鈴木さん。それぞれ後で自己紹介してもらいますので、よろしくお願いします。

 それから今年を振り返ってみますと、先ほど久道先生がおっしゃいましたように、政権交代でかなり大きな変化が大学でも起こっています。たとえば研究費で言いますと、若手(S)が完全廃止になってしまいました。優秀若手研究者の海外派遣も廃止。この数年、若手へのファンドが増えていたのが、一気になくなってしまうと。先端研究とか外国人の招聘も、半額に減らされる。かなり厳しい状況です。さらには、COEとかグローバルCOEも、これからは先細りになっていくようです。
 このような研究費をめぐる大きな変化に加えまして、もう一つの変化は、保健医療政策が見直されているということです。たとえば、後期高齢者医療制度をこれから4年かけて廃止して新しい制度をつくるという、方針が決まっています。それから、事業仕分けということですが、私も関わっている介護予防も事業仕分けの対象として議論されました。その結果ですが、「見直し」ということで、縮減の範囲や金額などは明示されない形になりまして、まあ首の皮一枚ですけれども、つながったのかなという感じでした。あのときの議論を聞いておりますと、介護予防が重要だということに異を唱える者は誰もいなかったわけですが、ただ、本当に今の介護予防でいいのか? どれくらい効果があるのか? システムとして効率的に機能しているのか? そういったことが大きく問われたように思います。そういった意味で、有効性の評価というのをきちんとやっていかなきゃいけないと改めて思った次第です。
 他にも、医学部の学生定員を1.5倍に増やす、あるいはたばこ税を増やす、介護労働者の賃金を引き上げるなど、いいことがたくさん始まっています。また、保健医療データのシステム化という点では、税と社会保障関係の共通の番号制度をつくろうということを民主党はずっと言っていますので、そこから我々の研究についても好影響があるかもしれません。がん登録の法制化ということが課題になっていますが、これはもともと、がん対策基本法が提案されたときに、民主党の原案ではがん登録を法制化するという ことが書かれてあったのですが、その後、自民党の反対があって、あいまいな形で法律ができたという経緯があります。そういった意味で、公共的な統計を使っていく、あるいはがん登録を始め疾病登録をきちんと法制化していく、そして、そのようなデータ・公的統計に基づいて行政施策を行っていくのだという動きが 民主党の中にはあると思いますので、そういったことも期待しながら、社会情勢が大きく変わる中で、少なくともそれに振り回されることなく、あるいはむしろ積極的に我々の方から提案をしていって、そして引っ張っていく。そのような力になりたいと思っておる次第であります。

 この後、がん登録の話を西野先生からしてもらいますが、先ほど久道名誉会長からもお話がありましたように、東北大学の公衆衛生というと、やはり一番大事なのはがん登録ですね。歴史からいっても、そして学問的な、あるいは社会的な貢献からいっても、がん登録なのです。初代教授の瀬木先生がつくられて、そして高野先生が大きく発展されて、最近では坪野先生、そして西野先生に引き継がれて、日本を代表するがん登録として連綿と続いているわけです。そういったことについて、西野先生からお話をしてもらうことを非常に楽しみにしております。

 以上で私のあいさつといたします。どうもありがとうございました。

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