東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学専攻 公衆衛生学分野

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2020年度(令和2年度)公衆衛生学教室同窓会総会

会長挨拶:この一年を振り返って

 コロナ禍のために、今年は同窓会総会を開催することができませんでした。皆様とお会いするのを毎年楽しみにしておりましたので、実に残念であります。恒例の会長挨拶として、書面にてこの一年を振り返ってみたいと思います。
 皆さん、ご存知の通り、久道茂名誉会長が10月24日に東北大学病院で亡くなられました。昨年の9月頃から体調を崩され、消化器内科での入院治療と在宅での療養を繰り返しておられましたが、遂に帰らぬ人となってしまいました。
 ご葬儀は、久道家・宮城県対がん協会・公衆衛生学分野の合同葬として執り行われました。当日は、村井嘉浩宮城県知事、一力雅彦河北新報社長、八重樫伸生東北大学大学院医学系研究科長など、6名から弔辞をいただきましたが、私も門下生代表として述べさせていただきました。コロナ禍にも関わらず約300名の方々にご参列いただき、生花140本、弔電225通もいただくなど、先生の交友の広さとご人徳が偲ばれる会となりました。
 私が先生と最後にお会いできたのは8月26日でした。1時間近くお話させていただき、そろそろお暇しようかと思ったところ、「俺の葬式のことなんだけど・・・」と、ご希望をお話になられました。その意味で、この度のご葬儀は、先生が弟子たちに課した最後のプロジェクトとなりましたが、先生、ご満足いただけましたでしょうか?


 さて、教室の人事ですが、遠又靖丈先生が母校の神奈川県立保健福祉大学の准教授に、張姝先生が国立長寿医療研究センターの研究員にそれぞれ転出しました。また、曽根稔雅先生が教室の准教授に就任してくれて、教育や研究で大活躍してもらっています。また院生では谷爲茉里奈さんと横川裕大さんが修士課程に入学し、ほぼほぼオンライン授業のなかで頑張っています。
 今年度の論文業績ですが、教室員が筆頭の英文論文は8篇出ました。そのなかで最もインパクトファクターの高い雑誌に掲載されたのは、博士2年の陸兪凱君の論文で、禁煙期間の長さと認知症発生リスクとの関連について大崎2006コホート研究データで解析し、3年禁煙すると認知症発生リスクは非喫煙者のそれと同じレベルまで下がるというものでした。European Journal of Epidemiologyというインパクトファクター 7.135の雑誌にすんなりとアクセプトされました。陸君、おめでとうございます。
 もう一つ、今年度の業績を振り返ってみますと、丹治史也先生(現 日本赤十字秋田看護大学)がBMJ Openに発表した論文ですが、これは仙台市の中山地区で、金銭的インセンティブにより人々の歩数が増加するか(終了後も持続するか)どうかをランダム化比較試験(RCT)で検証したものです。このプロジェクトでは、半年余りにわたって教室員総出で週末も含めて、頑張ってもらいました。さまざまな思い出深いプロジェクトとなりましたが、このようにきちんと形にして下さったこと、丹治先生を始め、皆様に改めてお礼を言いたいと思います。どうも有難うございました。

 さて、今年最大の出来事と言えば、新型コロナウィルスのパンデミックに尽きます。感染者の増加、経済活動の停滞、不安と抑うつの拡がりなど、先の見えない悩ましい日々が続いています。そして、新型コロナ感染は、私たちの生活を大きく変えてしまいました。オンラインで講義や会議を行うなど、去年の暮れには考えもしなかったことです。
 一方で、オンラインの普及は、通勤・通学や出張の時間や経費を大幅に削減し、私たちの生産性と自由度を高めてくれました。また、オンライン勤務が導入されたことで、育児・介護などと仕事との両立が可能になるなど、コロナは働き方改革や一億総活躍社会の実現にも影響を及ぼしています。
 中世にヨーロッパを席巻したペストがルネサンスと資本主義の契機となり、1854年にロンドンで流行したコレラが近代公衆衛生と疫学の契機となったように、コロナを契機に私たちはより良い社会を創ることが可能なのだと信じて、それを実現させるのは自分たちだという使命感を持って、頑張っていきたいと思っています。
 来年こそは、皆様と2年ぶりにお会いして、2年分の喜びを分かち合いたいと思っております。
 どうぞよろしくお願いいたします。
(2020/11/19)

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