東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学専攻 公衆衛生学分野

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2021年度(令和3年度)公衆衛生学教室同窓会総会

会長挨拶:この一年を振り返って

 コロナ禍のために、昨年に引き続き今年も同窓会総会を開催することができませんでした。そうこうしているうちに、いつも同窓会総会を開催していた会場(勝山館)が営業を終了してしまいました。皆様とお会いするのを毎年楽しみにしておりましたので、実に残念であります。恒例の会長挨拶として、書面にてこの一年を振り返ってみたいと思います。

 コロナ禍とともに、さまざまなところでデジタル化・オンライン化が進んできました。慣れてみると、それは便利なもので、何よりも会議などのために移動する必要がなくなり、時間もお金も効率的に使えるようになりました。この流れは今後も続くでしょう。このように、コロナが現代社会にもたらしたものは「禍」だけでなく、良いこともありますので、ここは発想を切り替えて「禍を転じて福となす」ことを心掛けたいものです。

 さて教室の人事ですが、准教授だった曽根稔雅先生が福島県立医科大学保健科学部作業療法学科の教授に就任しました。また、博士課程4年の松山紗奈江さんが4月に助手に就任し、10月から助教になりました。
 同窓生の人事では、中谷直樹先生が4月1日付けで東北大学東北メディカルメガバンク機構教授に就任されました。これにより、メディカルメガバンク事業がさらにパワーアップされましたので、大変心強く思っております。また、星真行先生が福島県立医科大学保健科学部の理学療法学科助教に就任しました。この学部は今年4月に開設したばかりですが、教室の同窓生である曽根先生と星先生が同時に赴任されたので、お互いに心強いことと思っております。
 大学院の修了では、3月に阿部喜子さん、山崎貞一郎さん、横川裕大さんが修士課程を、9月に松山紗奈江さんが博士課程を修了しました。また大学院の入学では、猪股栞さん、田中一平さん、藤原翔さん、渡邉拓さんの4名が修士課程に入学しました。

 今年度の論文業績ですが、教室員が筆頭の英文論文は10篇でした。そのなかで最もインパクトファクターの高い雑誌に掲載されたのは、博士3年の陸兪凱君の論文でした。1994年から2006年までの間に日本食パターンが強まった高齢者では2006年以降の認知症発生リスクが有意に低かったことを解明し、Clinical Nutritionというインパクトファクター 7.324の雑誌に論文を掲載しました。陸君、おめでとうございます。ちなみに、陸君はこの1年間で筆頭の英文論文を5編(つまり教室全体の半分)発表し、インパクトファクターの合計は25.534でした!
 このように、陸君の業績は大変素晴らしいものでしたので、今年度の東北大学藤野先生記念奨励賞を受賞しました。この賞は、本研究科の前身である仙台医学専門学校に在籍していた魯迅が発表した短編小説「藤野先生」のモデルである藤野厳九郎教授の偉業を記念し、平成17年度に創設されたもので、「本学に在籍する優秀な中国からの大学院留学生で今後飛躍的な活躍が期待される者」が受賞され、今年度は全学から6名が選ばれました。陸君、おめでとうございます!
 もう一つ、同窓会員の受賞では、丹治史也先生(現 日本赤十字秋田看護大学)が日本私立看護系大学協会看護学研究奨励賞を受賞されました。受賞対象となったのは、彼が大学院生だったときに従事した「中山歩け歩けプロジェクト」の結果をBMJ Openに発表した論文でした。丹治先生、おめでとうございます!

 さて最後に、教室の研究活動を振り返ってみます。一つは10年間続いた東日本大震災被災者健康調査が無事終了しました。厚生労働省からの研究費がもともと10年間の期限付きだったための終了ですが、自然災害の被災者をコホートとして10年追跡するという、世界的にも例のないプロジェクトであり、実際の運営に当たってくれた菅原さんには大変お世話になりました。このプロジェクトで被災者支援のポイントがいくつも解明され、社会の役に立つ研究になったと自負しております。一つ、嬉しい驚きだったことは、研究参加者の方々に「これで調査は終わりになります」とご案内したところ、「つながりが絶たれるようで寂しい」とか「規模を小さくしてでも、なんとか続けてもらえないか」といったお言葉をいただきました。この調査が被災者の方々のお役に立っていたことを実感できまして、ほんとうに「10年続けて、良かったなぁ」と思った次第であります。
 もう一つ、私は健康日本21(第二次)の最終評価を行う厚労省委員会の委員長を務めておりますが、そこで「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」という最重要目標が達成されたことを確認できました。これは、いわゆるCompression of Morbidityを世界で初めて政策化したもので、第二次の策定委員長として私が提案させていただきました。それが実現したことで、私は大変感激した次第であります。
 以上のように、今年は節目の年となりましたが、2つのプロジェクトを良い形で完結させることができたことを嬉しく思っております。これも、教員の菅原さんと松山さん、秘書の仲田さん、院生の皆さん、そして同窓の先生たちのお陰であり、改めて感謝申し上げたいと思います。ほんとうに有難うございました。

 節目といえば、私は2023年3月に定年退職となります。その意味で、来年度は大きな大きな節目の一年になります。来年こそは、皆様とお会いして、教授在任期間中のお礼を申し上げたいと思っております。
 どうぞよろしくお願いいたします。
(2021/12/20)

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