東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学専攻 公衆衛生学分野

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2025年度(令和7年度)公衆衛生学教室同窓会総会

会長挨拶

寳澤 篤
 皆様、本日はお集まりいただきましてありがとうございます。会長を務めさせていただいております、寳澤でございます。それでは教室の1年につきまして、私の方からご紹介をさせていただきたいと思います。
まず人事についてなのですが、令和7年3月に菅原先生がご退職されまして、現在は非常勤講師をお願いしております。あわせて4月に、修士課程の学生さんが4人入ってくれました。
入学してくれた学生さんですが、伊藤武尊さん、菅野友樹さん、田中瞳子さんという3名が来てくれています。また、童奥さんという中国からの留学生も修士として入ってくれました。10月からは中辻侑子さんが博士として入学しております。 卒業される方としては、秋入学だった渡部乙女先生がこの9月に博士課程を無事修了されました。現在論文の方は投稿中ということでございますが、お陰様で無事巣立っていただいたということになります。
お陰様で教室員の数もだいぶ増えてまいりまして、私、田淵貴大先生、中谷久美先生と、博士が4名、修士が8名ということで、だいぶ教室も活気が出てきていると思っているところでございます。
そんな中、公衆衛生としてどんな仕事をしていたかということなのですが、私、そして田淵先生もなのですが、疫学会の社会実装ワーキングというところに入っておりました。ちょうど私どもの授業では厚労省の方々に毎年講義をお願いしているのですが、その講義の後、「厚労省で特定保健指導や特定健康診査を勧めているが、健康指導の受診率がどうしても悪い。その中で、来てくれた方々にせめてこれだけは知ってほしいというリーフレットを作れないか」と相談を受けました。「疫学会や公衆衛生学会のお墨付きが欲しい」とのことで頼まれまして、私から玉越先生、磯先生にお話をしました。そして田淵先生を含め、様々な先生方にお願いをして、この「健康アクション」という健康づくりリーフレットを作成させていただきました。
ちょうど疫学会と公衆衛生学会のクレジットで、食事、身体活動、睡眠、喫煙という4つのテーマ(種類)を出させていただきました。

あとは今、田淵先生がかなり精力的に共同研究をやってくださっています。東北大学は「国際卓越研究大学」として認定されておりますが、多くの共同研究、そして共創研究所の設立を求められています。医学部としても、まだ実績としては一つだけで、他に共創研究所はなかったのですが、今、田淵先生のところに共創研究所のお話が来ております。第一三共様と結んだ契約でも成果が上がり、プレスリリースも出ておりまして、積極的に頑張っていただいているところになります。 共創研究所については設立準備中ということで、設立されましたら改めて教室の先生方にはご紹介できるかと思っております。
また、東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)についてですが、私は今も兼務をさせていただいております。この場でも先生方に何回かお話をさせていただきましたが、「自分の家系にこんな病気が多いが、どんなことに気をつければいいのか」「生活習慣に気をつけていたのに、なぜこんな病気になってしまったのか」といった疑問を明らかにするために調査を続けてまいりました。
ようやくこのあたりも成果として上がってまいりました。小さなグラフで申し訳ありませんが、いくつか遺伝子でスコアリングした疾病発症リスク(ここでは例として糖尿病の発症リスク)を挙げております。遺伝リスクが低い方、中程度の方、高い方をpolygenic risk scoreを用いてスコアリングしまして、その中で生活習慣が乱れている人とそうでない人で、リスクがどう違うかを見ました。 分かったことは、「生活習慣に気をつければ、どんな遺伝的背景があっても糖尿病の発症は予防できる」ということです。今まで公衆衛生として皆さんに「予防を頑張ってね」と言ってきたことは間違いではなかったということです。ただし、気をつけなければならないのは、「どんなに頑張っていても糖尿病になるリスクが高い方はハイリスクである」という事実です。
リスクが高い集団はやはり存在します。そういった方々には、どんなに生活に気をつけていても発症リスクがあるため、きちんと健診を受け、数値が上がってきたら早めに治療しなければならないという「予防の個別化」につなげられる成果が出てきたと考えております。
あと、こちらは震災後の調査になります。震災から2年ほど経ってからの調査ですので、あくまでサバイバーの方々を対象としておりますが、当時の被災状況と死亡率につきまして、中谷先生を中心にデータをまとめていただきました。先ほどご紹介がありましたが、中谷先生が大きく貢献されている部分でございます。
また、辻先生の時代から宮城県と東北大学で連携事業を行っており、メタボリックシンドロームのリスクファクターなどを調べてまいりました。「なぜ宮城県でこんなにメタボリックシンドロームが多いのか」を生活習慣から紐解こうと取り組んでおります。宮城県の喫煙率は「下がった、下がった」と言われており、実際に「みやぎ21健康プラン」の中間・最終評価でも改善傾向にあるという報告がなされていました。 しかし、NDBオープンデータで全国比較を行ってみて分かったことがあります。ちょうど40代から50代にかけての男性の喫煙率が40%を超え、女性であっても15%に達していました。これは国保の方々が中心のデータではありますが、全体で見ると「30数パーセントに下がった」と言いつつも、実際には子供を育てている世代の方々のほぼ半数が、まだタバコを吸っているという状況が浮き彫りになりました。
これは全国的にもそうなのかと思い、年齢調整をして比較しました。私の作ったグラフで見づらくて申し訳ないのですが、メタボも深刻でしたが、喫煙率についても年齢調整を行うと、宮城県の男性は全国6位、女性は4位という結果でした。以前からタバコについては声を上げてきたつもりでしたが、まだまだこのような状況だったということです。「血圧とタバコが日本人の死因を決めている」と訴え続けてきた中で、この状態は良くありません。田淵先生が来てくださったこともありますので、宮城県のタバコ問題についてもさらに切り込んでいかなければならないと思っている次第です。
そんな中、東北メディカル・メガバンク機構でタバコに関するデータを分析しました。その前に思い出話となりますが、このスライドは非常にヒストリカルな、宮城県コホートの皆様で書いたJE(Journal of Epidemiology)の論文の時、私がタバコのPAF(人口寄与危険割合)が男性34%、女性4%という結果を出したデータとなります。今回、短期間の追跡ではありますが、東北メディカル・メガバンク機構のデータでタバコと全死亡についてまとめてもらいました。 その結果、男性の32%、女性の4%が総死亡においてタバコに関連しており、1990年時点と状況が全然変わっていないことが分かりました。
もちろん「過去喫煙」の区分に一定の割合が移っていますので、やめた方々も含まれますが、相変わらず宮城県ではタバコが原因で命を落とす方が多い。さらに受動喫煙を考慮すると(結果だけお話ししますが)、男性は34%、女性は4%から7%に跳ね上がります。いわゆる「喫煙者本人」だけのデータで語るよりも、倍近い人々がタバコによって命を落としている計算になります。やはり「やめさせる」だけでなく、積極的な「喫煙予防」と「受動喫煙防止」をより強く訴えていかなければならないと感じました。
あとはナトカリ比(ナトリウム・カリウム比)についてです。昔から私を知っている方々からは「お前が塩のことを語るのか?」とよく言われるのですが、立場上、そういった発言をする機会が増えてまいりました。小暮先生とは登米市でかなりこの研究を続けてまいりましたが、昨年、日本高血圧学会でこの基準値が決定されました。理想は2、当面の目標は4という数値です。 これは、先ほど猪苗代先生からもご紹介がありましたが、高血圧治療ガイドラインにも掲載され、東北メディカル・メガバンク計画の成果として引用されています。私たちの発信するエビデンスが広がっていることを実感しております。また、泉先生に後押ししていただき、大久保先生からも「やるように」と言われていた高血圧の実証事業では、会社の食環境整備や測定を組み合わせてどう変化するかという課題を厚労省からいただき、私が代表として取り組んでまいりました。
こうしたナトカリの仕事を多方面で評価していただき、非常に嬉しかったのは、今年の日本循環器病予防学会において小暮先生がYIA(Young Investigator's Award)最優秀賞を受賞されたことです。これまでの取り組みが認められた証だと考えております。
それでは、本日のご講演の方に移らせていただければと思います。本日は鈴木先生と渡邊生恵先生にご登壇いただきます。ご紹介について私も考えてきたのですが、先ほど辻先生から素晴らしいご紹介をいただきましたので、このままご講演に移っていただきたいと思います。
それでは、鈴木寿則先生から「法律学から公衆衛生学への越境」というタイトルでお話しいただきます。鈴木先生、どうぞよろしくお願いいたします。

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